ウサギの尻尾(しっぽ)はなぜ短いの?
大昔、ウサギのしっぽはリスのように大きくて、長かったのです。
しかし今のウサギのしっぽは短い。 これはいったい何が原因でそうなったのでしょうか?
それは、ある事件がきっかけでそうなったのでした。
ある日、一匹のウサギが川べりで座っていました。ふっと向こう岸に目をやると、青々と茂る草が目に入ったのです。
「あの草を食べたいな..」 口から思わずよだれが出てきました。
ウサギは向こう岸に行ってあの草をが食べたいと思いましたが、残念なことにウサギは泳げないのです。
ちょうどその時、一匹のワニが水中から新鮮な空気を吸おうと顔を出しました。
ウサギはそれを見て考えました。 「ワニさんは泳げるし陸地も走れる、彼に向こう岸に連れて行ってもらう方法は無いかな...」
そのときワニはウサギを見て笑いながら言いました。 「ウサギ君、こんな暑い日に なぜ川には入らないんだ!!」
ウサギは言いました。 「暑いとは思わないが、お腹がすいて..。 」
「この世界に私達ウサギは沢山いるのですよ、ワニさんはどれだけ私達が食べる青草が要るのか知っているでしょう」
「ワニさん 私達ウサギは あなた達ワニの何十倍もいるのですよ。」
ワニ はそれを聞いてカチンときました。 そして怒りながら 「世界中には 何千何万匹のワニがいるんだ」
「この川にだって一千匹はいるんだ。、 君は この近くの森の中にこれだけ沢山のウサギを探し出せるかい?」
ウサギは目を丸くして言いました。 「探し出せない訳けないだろう!!」
「じゃあ まず私が ワニさん達の兄弟を先に数えて、 その後、ワニさんが 私の兄弟達を数えたらいい。」
「ワニさんは早く兄弟達を呼びに言っておいでよ、そして向こうの岸まで並ばせて..。
そしたら私が彼等の背中の上を跳んで数を数えるから。」
まもなくワニは彼の兄弟達を集めてきました。
大きいのやら、小さいのやら。 そしてまるで橋みたいに向こう岸まで並ばせました。
「うさぎ君 数を数えてよ。」
そこで ウサギは ”ワニ橋” の上を跳びはねて一匹一匹と数えていきました。
「1,2,3,4,5,6,...」
ウサギは飛び跳ねながら数えていき、最後の一匹を数え、向こう岸にたどり着きました。
その時、ウサギは得意気げに大笑いしたのです。
「ワニさん うまくだまされたね! 誰があなたと数をかぞえて遊ぶんですか。」
「ハハハ ハッ さようなら! 私は草を食べに行きたいだけさ..。」
「 ワニさんは この岸辺に新鮮な青草が生えているのを見なかったの!」
しかし ウサギが笑うにはすこし早すぎたのです。
なぜなら最後のワニが ウサギが得意がっている間に ウサギのしっぽを がぶりと噛み切ってしまったのです。
これ以降 ウサギのしっぽは刀で切ったように小さくなってしまいました。そして再び長く生えてくることはありませんでした。
それはウサギが他人をだました罰だからです。
おわり。
広西民間動物故事 「兔子的尾巴為什麼短?」 (瑶族)より
どうですか 「古事記」の「稲羽の素兎 (因幡(いなば)の白ウサギ)の
兎が海を渡るため 鮫(わに と読む サメ類のこと)に、どちらの一族が多いか数えましょうと
島から陸まで並ばして、その上を数を数えるふりをして渡ろうとするが
鮫はだまされていることに気づき 兎の毛皮をはぎ取ってしまうといった 話に そっくりですね!!
瑶族の話以外にも 漢族に 「兔子的尾巴」(民間動物故事) という同じような話があります。
これには ワニ の代わりに 亀が登場します。